OHTA VN

コラム

media

column

ネジ在庫管理の効率化:必要な量を確保するコツ

ネジ在庫管理の効率化:必要な量を確保するコツ

はじめに

ネジは製品を「つなぐ」だけでなく、製造ライン全体を支える生命線です。しかし種類やサイズが膨大なうえ、1本数円のネジでも欠品すればラインが止まり、納期遅延やコスト増大を招きかねません。本記事では、そんなネジ在庫を「欠品させず、過剰も抱えない」バランスをいかに取るかを解説します。

想定読者は、生産管理・資材購買・現場責任者の皆さまです。製造現場で日々頭を悩ませる在庫棚卸の工数削減や、IoTを活用した自動発注、ベトナム調達によるコストダウンなど、実務に直結する具体策を網羅しました。

この記事を読み終える頃には、ネジ在庫管理を体系的に捉え、すぐに現場で試せるチェックリストを手にしているはずです。それでは、適正在庫への第一歩を踏み出しましょう。

ネジ在庫管理の重要性とKPI

この記事で学べること

  • ネジ在庫が不足・過剰になるリスクとコストを把握できる
  • 在庫回転率・欠品率のKPIで適正在庫を見極める方法がわかる

ネジ在庫リスクと欠品コスト

ネジは1本あたりの金額が数円と小さくても、欠品が発生すると製造ライン全体が停止し、多額の機会損失を招きます。たとえば自動車部品工場では、ライン停止コストが1分あたり数十万円に上るケースも珍しくありません。また、納期遅延による顧客違約金やブランド毀損など、金額換算しづらいリスクも潜在しています。

一方、過剰在庫も資金を余分に拘束し、倉庫スペースや棚卸工数を圧迫します。ネジはサイズ・材質違いで品目数が膨大になりやすく、適切にロケーション管理されていないと取り違えや混入不良のリスクも高まります。「欠品によるライン停止」と「過剰在庫によるコスト増」の両方を抑えるには、定量的なKPI管理が欠かせません。

適正在庫を実現する在庫回転率・欠品率KPI

  • 在庫回転率
    在庫回転率 = 年間出庫数量 ÷ 平均在庫数量
    

    ネジのように単価が低い汎用品では、年6〜12回転が目安です(GISオータベトナム導入企業20社の中央値、2024年実績)。回転率が3回以下の場合は過剰在庫のサインといえます。

  • 欠品率
    欠品率 = 欠品発生行数 ÷ 発注行数
    

    世界水準では1%未満が推奨値です(当社コンサルティング案件の平均値、2024年)。欠品率を週次で可視化し、しきい値を超えた品目を優先的に改善します。

これらKPIをダッシュボードで可視化し、ABC分析で重点管理対象を絞り込むことで、少ないリソースでも高い改善効果が期待できます。たとえばある電子機器メーカーでは、ABCランクの「A」品目(年消費額上位20%)について在庫回転率を4→9回に引き上げ、年間で在庫金額を35%削減しました。欠品率も0.8%から0.2%へ低減し、生産ライン停止トラブルをゼロに抑えています。

ネジ在庫の可視化と最適発注

ABC分析・XYZ分析でネジ在庫可視化

ネジは「サイズ × 材質 × 表面処理」で数百〜数千品目に細分化されるため、すべてを同じ精度で管理すると管理工数もコストも跳ね上がります。そこで有効なのが ABC分析 と XYZ分析 の二軸で在庫をマトリクス化する手法です。

  • ABC分析(年間消費額ベース)
    • Aランク(上位20%): 消費額が大きく、欠品時の影響も甚大。リアルタイム在庫監視や自動発注を導入して、リードタイム短縮と安全在庫の最適化を図ります。
    • Bランク(次の30%): 週次または月次で在庫推移をモニタリングし、欠品率 1% 以下を目標に管理します。
    • Cランク(下位50%): 定期発注やサイクルカウントで管理コストを抑え、過剰在庫を防止します。
  • XYZ分析(需要変動率ベース)
    • Xグループ(需要安定): 需要変動が小さく、発注量を予測しやすい。回転率向上の中心に据え、在庫削減効果を最大化します。
    • Yグループ(季節変動): 半年〜1年単位で需要が膨らむ品目。販促計画や大型案件の前後で補充タイミングを調整します。
    • Zグループ(不規則): 特注ネジなど突発的に使用される品目。最小在庫を維持し、サプライヤと短納期対応の枠組みを整備します。

ABC × XYZ マトリクス として掛け合わせることで、「AX=金額大・需要安定」「CZ=金額小・需要不規則」といった優先度が一目瞭然になります。GISオータベトナムが支援した電子機器メーカーでは、このマトリクス導入により在庫金額を 28%削減、棚卸時間を 45%短縮 しました。

EOQとROPによる発注点計算と安全在庫設定

在庫を減らしつつ欠品を防ぐには、発注量と発注タイミングを数式で明示することが不可欠です。代表的なのが EOQ(Economic Order Quantity) と ROP(Reorder Point) の組み合わせです。

  1. EOQ:経済的発注量EOQ = √(2 × D × S / H)
    • D: 年間需要量(本)
    • S: 1回あたり発注コスト(円)
    • H: 年間保管コスト(円/本)

    例:年間需要 60,000 本、発注コスト 3,000 円、保管コスト 1.5 円/本の場合、EOQ は約 2,000 本になります。

  2. ROP:発注点ROP = d × L + SS
    • d: 1日平均需要(本)
    • L: 調達リードタイム(日)
    • SS: 安全在庫(本)

    安全在庫はサービス水準 95% を目標とし、需要とリードタイムのばらつきを考慮して算出します(標準偏差 σ に信頼係数 Z=1.65 を掛ける)。

EOQ‑ROP方式を ABC‑XYZ ランク別にチューニングすることで、たとえば「AX ランクのネジは安全在庫を厚めに」「CZ ランクは最小在庫+スポット発注」といったメリハリ管理が可能になります。結果として、月次発注件数を 40%削減 しながら欠品率を 0.3% に抑えた事例も報告されています。

出典: LokadOpenSCM

IoT・システム連携でリアルタイムネジ在庫管理

IoT重量センサーとスマートマットで数えない棚卸

SmartMat Cloudは、台秤型のIoT重量センサーをネジ箱の下に敷くだけで、1g単位の重量変化を10秒間隔でクラウドに送信します。箱当たりの基準重量を登録しておけば、本数換算した在庫が自動更新されるため、人手による棚卸工数を最大80%削減できます。自動アラートを「残量○%」の閾値で設定すれば、欠品リスクのある品目をハイライト表示し、担当者へメールやLINEで通知が届く仕組みです。自動車部品メーカーA社では、400品目に導入して欠品ゼロを12か月間継続、棚卸時間を1/4に短縮しました。

ERP・API連携でネジ在庫自動発注を実現

SmartMat Cloudが生成した「在庫残量・発注推奨データ」は、CSVまたはREST APIでERPへ自動連携可能です。中堅製造業で採用が多いアラジンオフィスの場合、受入・出庫データを即時反映するリアルタイムAPIオプションを利用すると、発注書まで自動生成されます。導入事例では、発注処理にかかる事務工数が月40時間→8時間まで削減され、在庫金額も15%圧縮できました。なお標準版はバッチ連携が主流のため、リアルタイム化にはAPIライセンスかRPA連携を検討するとよいでしょう。

ベトナムネジ調達とGISソリューション

ベトナムネジ調達戦略でコスト削減とリードタイム短縮

中国やタイと並ぶアジアの製造拠点として、ベトナムは人件費が日本の約1/5、電力単価も約40%とコスト競争力に優れています。さらに日系企業の集積が進んだ北部ハイフォンや南部ホーチミン近郊では、JISやISO対応のネジ専業メーカーが100社以上存在し、特殊材質や小径タップなども現地一括調達が可能です。

  • 為替リスク低減: ベトナムドンは米ドル連動で推移しやすく、円建てより価格変動が緩やか。半年〜1年単位の単価契約でもコスト予測が立てやすい。
  • リードタイム短縮: ハイフォン港から関東港湾までは最短6日。緊急時は航空便で3日以内に輸送でき、日本国内調達と遜色ないリードタイムを確保できます。
  • FTA活用: 日越EPAにより、原産地証明を取得すれば関税0%。特にステンレス・チタンねじで10%以上のコスト削減事例があります。

こうした条件を踏まえ、GISオータベトナムでは「月間需要1,000本以上のAランク品目は現地量産・海上輸送」「Yグループ(季節変動)が大きい品目は国内緊急在庫」といった ハイブリッド調達スキーム を提案。導入企業の平均で、調達コスト17%削減・在庫金額22%削減を達成しています。

GISネジソリューションで少量多品種ネジ在庫最適化

ベトナム現地ネットワークを持つGISオータベトナムは、「調達+在庫+品質」 をワンストップで支援する独自ソリューションを展開しています。

機能 具体的サービス ユーザーメリット
VMI(Vendor Managed Inventory) GISが現地倉庫で安全在庫を持ち、消費実績に合わせて自動補充 国内工場での在庫ゼロ化、キャッシュフロー改善
カスタムキッティング 組立工程ごとに必要本数をパッケージ化し、ロット番号とQRコードを付与 ピッキングとトレース工数を50%削減
多品種少量対応ライン M3以下や特殊頭形状など、1ロット5,000本から短納期生産 開発試作〜量産立ち上げの期間短縮
日本語品質レポート JIS B 1012, ISO 898-1の引張・硬度試験を現地検査で実施し、日英二か国語の成績書を発行 品質監査負荷を軽減し、ISO 9001要求事項に準拠

導入事例では、電子機器メーカーB社が月間800アイテムのネジ在庫をGISのVMIに移管し、棚卸作業を年間150時間削減、欠品回避率を99.8%→100%に改善しました。さらにキッティング化により、ライン間違いによる締結不良をゼロに抑えています。

出典: オータベトナム

まとめ―ネジ在庫管理チェックリストと改善手順

ネジ在庫管理チェックリストで現状診断

以下の10項目を Yes/No で評価し、未達項目を優先改善ポイントとして抽出しましょう。

  1. ABC/XYZランク付けを実施し、重点管理品目を特定している
  2. 在庫回転率・欠品率を月次でモニタリングしている
  3. EOQ・ROPを品目別に設定し、発注点を自動化している
  4. IoT重量センサー/バーコードでリアルタイム在庫を取得している
  5. ERPやMESと在庫データの双方向連携を自動化している
  6. 安全在庫・発注点のパラメータを四半期ごとに見直している
  7. 棚卸工数をKPI化し、削減目標と実績を管理している
  8. ベトナムを含む多拠点調達で為替・災害リスクを分散している
  9. ロットトレースと品質記録をJIS/ISOに沿って管理している
  10. PDCAサイクルを四半期ごとに回し、継続的改善を実践している

チェックリストの達成率が 80% 未満の場合、ネジ在庫の欠品/過剰リスクが高い状態です。達成率を毎期モニタリングし、改善の効果を定量的に確認しましょう。

コスト削減と品質向上のポイント総括

  • コスト削減: ABC×XYZ×EOQ・ROPで「持ちすぎ」を解消し、平均在庫金額を 20〜35% 圧縮。
  • 工数削減: IoT重量センサーやVMIで棚卸・発注を自動化し、現場工数を 50〜80% 削減。
  • リードタイム短縮: ベトナム現地量産+国内緊急在庫のハイブリッド調達で、調達リードタイムを 30〜50% 短縮。
  • 品質向上: QRコード付きキッティングと日本語品質レポートにより、トレーサビリティと監査対応を強化。

これらの施策を 段階的に導入 し、KPIをダッシュボードで可視化しながらPDCAを回すことで、ネジ在庫は「コスト削減の源泉」へと変わります。まずは本記事のチェックリストを用いて現状を診断し、優先度の高い課題から着手してください。

さいごに

サンプルや資料などのご相談は本メールにお返事いただくか、弊社担当営業までご相談ください!

column_cta-banner

オータベトナムではねじやボルトの締結部品などの既製品販売をはじめとして、
モノづくりの裾野である切削加工、検査、組み立て、梱包なども対応を行っております。
弊社の設備一覧はこちらをクリック

アジアの製造業の皆さまの”便利屋”として、お困りがあればオータベトナムへご相談ください!
URL: https://ohtavn.com/contact/

コラム一覧へ戻る

トップに戻る