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製造現場での締結不良を防ぐ!事例と対策まとめ

製造現場での締結不良を防ぐ!事例と対策まとめ

はじめに

製造現場において、ネジやボルトによる締結はあらゆる機械や装置の信頼性を支える重要な工程です。しかし、適切な締付けがなされていないと、ゆるみや破断といった「締結不良」が発生し、品質不良や重大な事故につながる恐れがあります。こうした不良は、設計段階でのミス、工具や作業環境の問題、あるいは材料特性や腐食・温度などの外的要因により発生することが多く、現場では常に注意が求められます。本記事では、締結不良の基本的なメカニズムや主な発生原因を整理しながら、実際のトラブル事例とその対策をわかりやすく紹介していきます。

【事例で学ぶ】ネジ締結不良の原因と対策

現場で発生した締結不良の実例集

製造現場で頻繁に報告されるネジ締結不良には、構造部材の脱落や機械の停止を引き起こす深刻な事例が多数存在します。以下に代表的なトラブルとその概要を紹介します。

樹脂部品のへたりによるナットの脱落事例
ある機器では、樹脂パーツを固定するナットが運転中に脱落。原因は、締結時の軸力による樹脂のへたりと、使用中の外力によりさらに変形が進行したことによるものでした。結果として、ナットの締付け力が失われ、機械が停止しました。

レール固定用ボルトの疲労破壊(熱処理不良・トルク不足)
鉄道車両のレール固定用に使われたSCM435ボルトが、繰返し荷重による疲労破壊を起こしました。原因は、熱処理不良により金属組織が粗大化し、加えて締結トルクが適正に管理されていなかったことです。最終的には破面観察により疲労破断が確認されました。

小ねじの斜め締め・二度締めによる不具合流出
微小トルクの締付けを必要とする電子機器の組立工程において、目視で確認できない斜め締めや二度締めが発生。不良品の流出が課題となっていましたが、トルクと角度を精密に管理できるエラー検知装置を導入することで流出を完全に防止できました。

外観不良(バリ・割れ)によるトラブルと未検知問題
量産ラインにて、転造工程で発生したバリや、鍛造による微細なクラックが検査で見逃され、組立後の強度不足や締結不良の要因となりました。人手検査の限界が浮き彫りとなった事例です。

各事例にみる原因分析と再発防止策

これらの事例から見える共通の教訓は、締結信頼性を確保するための「設計・工程・検査」の三位一体での対策の重要性です。

設計段階での強度確認と素材選定の重要性
樹脂を含む締結では、軸力による変形を考慮したカラーの挿入や、応力解析に基づいたボルトの選定が求められます。また、疲労破壊が懸念される場合は、S-N曲線による寿命予測と適切な安全率の設定が不可欠です。

初期締結トルクと軸力の最適設定
トルク過多による延性破壊や、トルク不足によるゆるみや疲労破壊を防ぐには、締付け線図を用いた適正トルクの設定が有効です。ナットの緩みを防ぐためには、ばね座金や緩み止めナットなどの副資材も活用されます。

工具・締結装置のメンテナンスと検知機能の活用
ねじチャック部の摩耗やビットの損傷は、締結異常の温床となります。定期交換と状態監視、そして締付けトルク・角度をリアルタイムにモニタできる装置の導入により、不良の未然防止が可能になります。

外観・寸法検査の自動化による品質管理強化
画像処理センサを活用した全数検査体制は、微細なクラックや寸法ズレといった外観異常を正確に検出できます。トレーサビリティの観点からも、検査データのデジタル管理は今後の品質保証における重要な施策といえるでしょう。

これらの対策を講じることで、締結不良の再発防止だけでなく、製品全体の信頼性向上にもつながります。

締結不良を未然に防ぐ!製造現場の対策ポイント

トルク管理とねじ締結品質の向上方法

ネジ締結の品質を安定させるには、何よりも「トルク管理」が重要です。特に初期締結時に適切なトルクと軸力を与えることで、長期的なゆるみや疲労破壊を防止できます。

ボルト締付け線図を用いた設計とトルク制御
ボルト締付け線図とは、ボルトにかかる軸力と伸び、被締結体の圧縮とのバランスを図で示したもので、設計時における締結条件の最適化に活用されます。締結トルクの設定が適正であれば、外力が作用してもボルトの内力は抑えられ、疲労破壊のリスクが大幅に低減します:contentReference[oaicite:0]{index=0}。

エラー検知付きナットランナによる微小トルク対応
電子機器などに多用される小ねじでは、0.1 N·m未満の微小トルク管理が求められます。こうした締結には、トルクと角度をリアルタイムで監視し、斜め締め・二度締めなどの異常を自動検出するナットランナが有効です。導入により不良品の流出を防ぎ、生産性と信頼性の両立が可能になります:contentReference[oaicite:1]{index=1}。

安定した軸力を確保するための冶具やカラーの活用
特に樹脂部品のように締結面が変形しやすい素材では、金属製のカラー(スペーサ)を挿入することで、軸力を安定化させることができます。これは、部品のへたりによる軸力低下やナットの緩みを防ぐ効果的な対策です:contentReference[oaicite:2]{index=2}。

締結トラブルを防ぐ検査と品質保証体制

締結不良の予防には、事前の設計・施工だけでなく、後工程での検査と品質保証体制も欠かせません。

画像処理システムによる全数外観検査の導入
近年は、高精度カメラとAIを組み合わせた画像処理検査が普及しており、バリ・クラック・変形などの外観不良をインラインで高速かつ高精度に検出できます。これにより、人手検査では見落としがちな微細な異常も確実に捕捉し、不良流出を防止します。

ピッチゲージ・限界ゲージ・トルク試験による寸法管理
ネジ山の形状確認にはピッチゲージや限界ゲージ、トルクレンチによるねじ込みトルクの検査が有効です。これらの機器を活用することで、JISやISOの寸法公差に準拠した品質管理が行えます。測定データの標準化・記録化も重要な管理ポイントです。

品質管理・トレーサビリティと教育訓練の充実
不良発生を最小限に抑えるには、検査体制とともに現場作業者のスキル向上も欠かせません。締結トルクの意味や異常の兆候を理解できるよう、教育プログラムの整備が求められます。また、検査記録や不具合履歴をデジタルで管理することで、トレーサビリティの確保と工程改善にもつながります。

これらの対策を総合的に取り入れることで、締結不良の未然防止と、安定した製造品質の維持が可能となります。

FAQ

Q1. ネジ締結不良のなかで、最も多いトラブルは何ですか?

A1. 最も多く報告されるのは「ゆるみ」や「疲労破壊」によるトラブルです。特にナットの緩みに起因する軸力低下から、繰返し応力でボルトが破断する事例が多く見られます。

Q2. トルク管理だけでは不良を防げないのですか?

A2. トルク管理は基本ですが、締結面の状態や被締結材の特性によっては正しいトルクでも締結力が不十分になることがあります。軸力の管理や補助冶具(例:金属カラー)の使用も併せて検討する必要があります。

Q3. 小ねじの締結不良を防ぐにはどうしたらよいですか?

A3. 斜め締めや二度締めといった不良は、トルク・角度を同時に監視できるマイクロナットランナのような装置を用いることで検出可能です。目視検査では難しい微小トルクの管理にも対応できます。

Q4. ネジの外観検査は全数対応すべきですか?

A4. 製品の安全性が求められる業種では全数検査が推奨されます。特にバリやクラックなどの微細な不良は画像処理システムを用いた自動検査が有効です。インライン検査により、不良品の流出を未然に防ぐことができます。

まとめ:締結不良対策で現場の信頼性を高める

ネジ締結不良は、ゆるみ、過剰トルク、疲労破壊、材料異常など多様な形で現れます。その多くは設計段階の見落としや締付け条件の誤設定、検査不備といった要因によって発生します。本記事で紹介した実例からは、トルク管理、適切な工具・装置選定、外観検査の自動化といった実務的な対策の重要性が明らかになりました。締結品質を高めるには、工程設計、設備選定、作業管理の三位一体による改善が求められます。これらを現場に定着させることで、製品の信頼性と安全性を一層高めることが可能です。

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