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締結不良を防ぐネジの管理方法:製造現場のチェックポイント

締結不良を防ぐネジの管理方法:製造現場のチェックポイント

たかがネジ、されどネジ。その一本が品質を左右する

身の回りの多くの製品は、部品を「ネジ」で繋ぎとめることで成り立っています。普段意識しにくいこの小さな部品が、実は製品の品質や安全性を支える重要な役割を担っています。

もしネジの締め付けが不適切だったらどうなるでしょうか?製品の性能低下、故障、場合によっては大きな事故につながる可能性もあります。特に高い信頼性が求められる分野では、「ネジの締結不良」は絶対に避けなければならない問題です。

この記事では、製造現場で起こりうるネジ締結不良の種類とその原因を解説し、それを防ぐための具体的な管理方法とチェックポイントをご紹介します。現場の管理者、作業者、品質管理担当者の皆様の、より安全で高品質なモノづくりに貢献できれば幸いです。

なぜ起こる?ネジのトラブル:よくある不良とその原因

安定した品質のためには、まずどのような締結不良があり、何が原因で起こるのかを知ることが大切です。

ネジの「困った!」あるある:こんな不良、見たことありませんか?

現場で見られる代表的なネジ締結不良には、以下のようなものがあります。

  • 緩み: 締結後に振動、衝撃、温度変化などでネジが徐々に回転し、締結力が低下する現象。稼働中に振動が発生する機械などで特に注意が必要です。
  • 破損: 締め付けトルク(ネジを回す力)が過大だった場合に、ネジ本体や被締結材(相手部品)が耐えきれずに壊れてしまう状態。逆にトルク不足は、緩みやガタつきの原因になります。
  • ナメ(ネジ頭のつぶれ): 工具がネジ頭の溝や角にしっかり嵌合しないまま回してしまい、溝や角が潰れて工具がかからなくなる現象。小さいネジや柔らかい材質で起こりやすいです。
  • 位置ずれ・斜め締結: ネジが正しい位置からずれたり、斜めに入ったまま締め付けられたりする状態。部品が正しく組み付かず、機能不全や強度不足を引き起こす可能性があります。

これら以外にも、ガスケットの過剰な潰れや、ネジ自体の初期不良なども考えられます。

なぜ?どうして?締結不良を引き起こす「犯人」たち

これらの不良は、多くの場合、複数の要因が絡み合って発生します。主な原因を見てみましょう。

  • 不適切なネジの選定: 使用環境(温度、湿度、振動など)や必要な強度、相手材の種類に合わないネジ(材質、強度区分、種類)を選んでしまうと、腐食、強度不足、緩みなどが発生しやすくなります。
  • トルク管理の不備: 適切な締結トルクが設定・管理されていない、使用するトルクレンチなどの工具が校正されていない、感覚頼りの締め付けなどが、締めすぎや締め付け不足の原因となります。
  • 作業者のミスやスキル不足: 締め忘れ、手順誤り、工具の不適切な使用といったヒューマンエラーも、不良に繋がる大きな要因です。
  • 使用工具の摩耗やメンテナンス不足: 摩耗したドライバービットやレンチはナメを引き起こしやすくなります。自動締結装置などもメンテナンス不足はトルクのばらつきや位置ずれの原因となります。
  • 不適切な保管状態: ネジの錆びや汚れ、変形は、強度低下や摩擦係数の変化を招き、適切な締結を妨げます。
  • 作業環境: 過度の振動、狭い作業スペース、不十分な照明なども、作業ミスを誘発し品質に影響を与える可能性があります。

ここが肝心!不良を防ぐためのネジ管理【現場のチェックポイント】

締結不良を防ぐには、設計・選定から保管まで、各工程で適切な管理を行うことが重要です。各段階での管理方法とチェックポイントを見ていきましょう。

ステップ1:全てはここから!「設計・選定段階」での管理

適切なネジを選定することが、後の工程でのリスクを低減する第一歩です。

  • チェックポイント1:使用環境・負荷に適したネジを選定しているか?
    • 材質: 環境条件(湿度、腐食性など)に合わせて、ステンレスや適切な表面処理が施された鋼などを選びます。相手材との「異種金属接触腐食」にも注意が必要です。
    • 強度区分: 設計上必要な締結力(軸力)に対し、十分な強度を持つ強度区分のネジ(例: 4.8, 8.8, 10.9)を選定します。安全率を考慮しましょう。
    • 種類: 使用目的に応じ、小ねじ、ボルト、タッピングねじなど適切な種類を選びます。
  • チェックポイント2:締結箇所や作業スペースに適した形状か?
    • 頭部形状(なべ、皿、六角など)やリセス形状(十字穴、六角穴など)は、締結箇所、使用工具、外観要求に合わせて、作業性が良く工具がしっかりかかるものを選びます。
  • チェックポイント3:「緩み止め」、必要ならちゃんと対策してますか?
    • 振動や温度変化が大きい箇所では緩み対策を検討します。対策としては、緩み止め座金(スプリングワッシャーなど)、緩み止めナット(ナイロンナット、Uナットなど)、ネジロック剤、ダブルナットなどがあり、環境やコストに応じて最適な方法を選定します。

ステップ2:いざ実践!「作業工程」での管理

実際の締結作業での管理が、品質を確保する上で極めて重要です。

  • チェックポイント4:力の加減、すなわち「トルク管理」は完璧ですか?
    • 適切な締結トルクの設定: ネジに適切な「軸力」(部品を締め付ける力)を発生させるため、目標軸力やネジの仕様から締結トルク値を決定し、作業者に周知します。
    • トルク測定機器の正しい使用と校正: 設定トルクで正確に締めるため、トルクレンチ、トルクドライバー、ナットランナーなどを使用します。これらの工具は定期的に「校正」し、精度を維持することが必須です。
    • トルクの記録と監視: 重要箇所では締結トルクを記録し、ばらつきを監視することも有効です。
  • チェックポイント5:その締め方、本当に合ってますか?
    • 標準化された手順の確立: 「誰が作業しても同じ品質」を目指し、作業手順を明確に定め、標準作業手順書などで共有します。
    • 正確な位置決めと垂直な締め付け: ネジは穴に対してまっすぐ垂直に入れ、斜め締結を防ぎます。特に自動機では位置決め精度を定期確認します。
    • 適切な締め付け速度: 速すぎる締め付けは焼き付きやトルク管理の妨げになることがあるため、適切な速度でスムーズに締め付けます。
  • チェックポイント6:作業する人の「腕」と「意識」、高めてますか?
    • 知識・技能教育の実施: 作業者には、ネジの種類、トルク管理の重要性、工具の正しい使い方などに関する教育・訓練を定期的に行い、スキルと知識の向上を図ります。
    • 理由の理解促進: 手順だけでなく「なぜそうするのか」という理由も説明することで、作業者の品質意識を高めます。
  • チェックポイント7:使う「道具」の状態、いつもチェックしてますか?
    • ビット・ソケット等の点検・交換: ドライバービットやソケットなどは摩耗するため、定期的に状態を確認し、摩耗が見られたら速やかに交換します。交換基準を設けるのが効果的です。
    • 締結工具本体のメンテナンス: 電動ドライバーやナットランナーなども、メーカー指示に従い定期的な点検・メンテナンスを実施し、性能を維持します。

ステップ3:締め終わった後も油断禁物!「検査・点検段階」での管理

締結作業後の確認プロセスも品質保証のために重要です。

  • チェックポイント8:本当に大丈夫?「締結トルク」を再確認!
    • 締結トルクの検証: 規定トルクで締まっているか、トルクレンチを用いた検査(増し締めトルク法、戻しトルク法など)で確認します。製品の重要度に応じ、全数または抜き取りで実施します。
  • チェックポイント9:見た目も大事!「外観検査」で異常を発見!
    • 締結後のネジとその周辺を目視で確認します。ネジの浮き、傾き、頭部や座面の傷、ナメ、被締結材の割れ・変形などをチェックします。必要に応じてゲージ類での測定も有効です。
  • チェックポイント10:使っているうちに緩んでない?「定期点検」のススメ
    • 特に振動が多い箇所や重要保安部品については、稼働後の定期的な点検(緩み確認、増し締めなど)計画を立て、実施することが望ましい場合があります。結果を記録し、改善に繋げます。

ステップ4:出番を待つ間も大切!「保管段階」での管理

ネジを使用するまでの保管状態も品質に影響します。

  • チェックポイント11:ネジ、快適な環境で眠ってますか?
    • 湿度・温度管理: 錆び防止のため、保管場所は高温多湿を避け、乾燥した状態を保ちます。特に高温多湿な地域では、除湿や密閉容器、乾燥剤の活用を検討します。
    • 防錆対策: 防錆油塗布や防錆包装の効果を損なわないよう、開封後は速やかに使用するか適切に再包装します。
  • チェックポイント12:迷子になってませんか?「整理整頓」と「表示」
    • 誤品混入を防ぐため、種類、サイズ、材質などが明確にわかるように区分けし、ラベル表示を徹底します。これにより作業効率も向上します。
  • チェックポイント13:古いものから使いましょう!「先入れ先出し」
    • 長期保管による劣化リスクを抑えるため、古いものから使用する「先入れ先出し(FIFO)」のルールを徹底できる仕組みを作ります。
  • チェックポイント14:たまには様子を見てあげて!「保管中の点検」
    • 定期的に保管状態を確認し、錆び、汚れ、変形などをチェックします。特に特殊なコーティングがされたネジなどは、メーカー推奨の保管条件や使用期限を確認し、遵守します。

まとめ:日々の小さな積み重ねが、確かな品質を築く

ネジの締結不良は、設計から保管、作業に至るまでの継続的な管理によって防ぐことが可能です。

締結不良防止の要点:

  • 適切な選定: 使用条件に合ったネジを選び、必要なら緩み対策を施す。
  • 厳格なトルク管理: 正確なトルク設定、校正された工具の使用、トルク監視を行う。
  • 標準化された作業: 正しい手順を定め、作業者教育を行い、安定品質を確保する。
  • 確実な工具管理: 工具の摩耗チェックと定期メンテナンスを行う。
  • 徹底した検査: 締結後のトルクチェックや外観検査で異常を早期発見する。
  • 適切な保管: 錆びや劣化を防ぐ環境で整理して保管し、先入れ先出しを徹底する。

これらのチェックポイントを参考に、自社の管理体制を見直し、継続的に改善していくことが不良ゼロへの道です。特に、多品種少量生産や海外拠点での生産においては、基本的な管理項目の着実な実践が安定品質の鍵となります。

私たち Ohta Vietnamは、ベトナムにおいて少量多品種のネジ・締結部品をオンラインで供給し、お客様の調達効率化や在庫管理最適化を支援しています。ネジの選定や管理、調達に関するお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。

さいごに

サンプルや資料などのご相談は本メールにお返事いただくか、弊社担当営業までご相談ください!

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