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「締めすぎ」を防ぐ!ネジの適正締結トルクとは?

「締めすぎ」を防ぐ!ネジの適正締結トルクとは?

はじめに

「たかがネジ一本」なんて思っていませんか? 実は、ものづくりの世界では、この小さな部品の締め付け方が、製品の品質や安全性を大きく左右するんです。特に重要なのが「トルク管理」。簡単に言えば、ネジをどれくらいの力で締め付けるか、ということです。

力を入れすぎて締めすぎると、ネジや部品が壊れてしまうかもしれません。逆に、力が足りないと、使っているうちに緩んできて、思わぬトラブルや事故につながることも…。

「じゃあ、どうすればいいの?」

この記事では、そんな疑問にお答えします。ネジを「ちょうどよく」締めるための「適正締結トルク」について、基本から現場での実践方法まで、わかりやすく解説していきます。製造現場の技術者の方から、品質管理担当者、設計者、そして実際に作業される方まで、ネジに関わるすべての人に読んでいただきたい内容です。さあ、一緒に見ていきましょう!

ネジの締結トルクって、そもそも何?

まずは基本のキ、「締結トルク」そのものについてお話しします。

トルクとは「回す力」、目的は「ギュッと押さえる力」

締結トルクとは、ネジやボルトを締めるときに、レンチなどで加える「回す力」のこと。力(N)と、回転の中心からの距離(m)を掛け合わせたもので、「N·m(ニュートンメートル)」という単位で表されます。

では、なぜネジを回して締め付けるのでしょうか? その目的は、部品同士をしっかり固定するための「軸力(じくりょく)」を生み出すためです。ネジを締めると、ネジ自身がわずかに伸びます。そして、伸びたネジが元に戻ろうとする力、これが軸力です。イメージとしては、見えない強力なバネが部品同士をギュッと押し付けている感じ。この軸力による摩擦のおかげで、部品はズレたり緩んだりせずに固定されるわけです。

つまり、適切なトルクで締める = 適切な軸力を得る、これがネジ締結の核心なんですね。

「ちょうどいい」が肝心!締めすぎ・緩すぎのリスク

「しっかり締めなきゃ!」と、つい力を入れすぎてしまうこと、ありませんか? でも、それが落とし穴になることも。締めすぎも、逆に緩すぎも、様々な問題を引き起こします。

締めすぎ(オーバートルク)は「破壊」のもと

  • ネジや部品が壊れる!: ネジが伸び切ってしまったり、ポキッと折れたり。相手の部品が柔らかければ、座面がめり込んだり、亀裂が入ることも。
  • かえって緩みやすく?: 締めすぎでネジ山が傷つくと、摩擦が変わってしまい、予期せぬ緩みを引き起こす場合さえあります。

締め不足(アンダートルク)は「緩み・脱落」を招く

  • 気づいたら緩んでる!: 振動や温度変化で、いつの間にかネジが緩んでしまう。これは本当によくあるトラブルです。
  • ガタつき、機能不全: 部品がしっかり固定されていないため、異音がしたり、本来の性能が出せなかったり。
  • 最悪の場合、大事故に: 自動車のタイヤが外れたり、機械が故障したり… ネジ一本の緩みが、取り返しのつかない事態を招く可能性もゼロではありません。

どうでしょう? 「ちょうどいいトルク」で管理することが、いかに大切かお分かりいただけたでしょうか。

じゃあ、「ちょうどいいトルク」はどうやって決めるの?

適正なトルク値は、実は様々な要因で変わってきます。まるで料理のレシピのように、材料や条件によってさじ加減が必要なんです。

トルク値を左右する主なプレーヤーたち

  • ネジ自身の特徴: ネジの太さ(呼び径)、ネジ山の細かさ(ピッチ)、材質(鉄、ステンレスなど)、強度(強度区分)が違えば、耐えられる力も必要なトルクも変わります。
  • 相手(被締結材)の状況: 締め付ける相手の材質(金属か樹脂かなど)や硬さも影響します。柔らかい素材には注意が必要です。
  • 摩擦の大きさ: ネジ山と座面(ネジ頭やナットが当たる面)の摩擦が、トルクから軸力への変換効率を大きく左右します。これがクセモノなんです。
  • 潤滑剤を使うかどうか: 油やグリスを塗ると、摩擦が劇的に小さくなります。すると、同じトルクでも軸力はグンと高くなる! これを知らずに乾燥時と同じトルクで締めると、簡単に締めすぎてしまいます。潤滑剤を使う場合は、トルク値を下げる調整が必須です。
  • 狙うべき軸力: そもそも、その箇所でどれくらいの固定力(軸力)が必要なのか? 設計段階で決まるこの目標値が、トルク設定のゴールになります。

目安を知るための計算式と「トルク係数」

トルク値の目安は、簡単な式で計算できます。

T = k * d * F

  • T: 締結トルク
  • k: トルク係数 ← コレが重要!
  • d: ネジの呼び径
  • F: 目標軸力

この式で一番のキーマンが「トルク係数 (k)」。これは、加えたトルクのうち、どれだけが有効な軸力に変換されるかの「効率」を示すような値です。そして、この効率は主に「摩擦」の状態で大きく変わります。

潤滑されていれば効率は良く(kは小さく)、乾燥していれば効率は悪く(kは大きく)なります。問題は、この kの値が、ちょっとしたことでバラつきやすい こと。だから、トルク値だけを頼りにすると、実際の軸力には思った以上に差が出ることがあるんです。

便利な「標準トルク表」と注意点

毎回計算するのは大変なので、実務では「標準締付けトルク表」がよく使われます。ネジメーカーなどが、材質やサイズごとに推奨トルク値をまとめてくれている便利な資料です。JIS規格(JIS B 1083 など)も参考になります。

ただし、注意点が一つ。これらの表は、あくまで 一般的な条件下での参考値 だということ。あなたの現場の条件(特に潤滑状態!)が表の前提と違うなら、鵜呑みにせず、必ず実際の条件に合わせて調整したり、テストしたりして、最適なトルク値を見つける努力が必要です。

現場でどう管理する?トルク管理の実践ガイド

さあ、理論はOK。次は、どうやって現場で「適正トルク」を実現するか、具体的な方法を見ていきましょう。

締め方の主流「トルク法」と、より精密な「回転角法」

  • トルク法: 一番ポピュラーな方法。トルクレンチで目標のトルク値まで締め付けます。シンプルで分かりやすい反面、前述のトルク係数(摩擦)のばらつきで、軸力精度はそこそこという側面も。
  • 回転角法: より高い軸力精度が求められる場合に使う方法。まず軽い力(スナッグトルク)で部品を密着させ、そこから決まった「角度」だけ締め増します。摩擦の影響を受けにくく、軸力のばらつきを抑えられますが、管理が少し複雑になります。エンジン部品など、シビアな箇所で活躍します。

どちらを選ぶかは、求められる精度やコスト、作業性で判断します。

相棒選びが肝心!トルクレンチの種類と正しい使い方

トルク管理の主役、トルクレンチ。いくつか種類があります。

  • 手動式: カチッと音で知らせる「プレセット形」が一般的。ダイヤルで読み取るタイプも。
  • 電動・エア式: 量産ラインで活躍。設定トルクで自動停止。
  • デジタル式: 高精度で、数値を表示。データ記録できるものも。

選ぶときは、必要なトルク範囲、精度、使い勝手を考慮しましょう。そして、一番大切なのは正しい使い方!

  • 持つ位置: グリップの指定された場所を握る!違う場所だと精度が狂います。
  • 締め方: ゆっくり、滑らかに。プレセット形は「カチッ」で即ストップ!追い締めは絶対ダメ!
  • 保管: 精密機器です。衝撃を与えず、プレセット形は使用後メモリを最低値に。

トルクレンチも定期健診を!「校正」の重要性

トルクレンチも、使っているうちに(あるいは使わなくても)精度がズレてくることがあります。

なぜ校正が必要?
「ちゃんと測ってるつもり」が、実はズレていた…なんてことになったら、トルク管理の意味がありませんよね。だから、定期的な精度のチェックと調整=校正 が絶対に必要なんです。

どれくらいの頻度で?
一般的には年1回、または一定の使用回数ごとが目安ですが、使用状況に合わせて社内でルールを決めるのがベストです。

どうやって?
専用のテスターで精度を確認します。信頼できる業者さんに依頼するのが確実。特に品質管理システム(ISOなど)では、校正の記録(トレーサビリティ)が求められます。

最後はやっぱり「人」と「確認」

どんなに良い道具やルールがあっても、使う「人」の意識とスキル、そして「確認」の仕組みがなければ、絵に描いた餅。

  • 教育: なぜトルク管理が大切なのか、正しい工具の使い方、手順の遵守。これらをしっかり伝え、理解してもらうことがスタートラインです。
  • 検証: ちゃんと締まっているか、時々チェックする仕組みも大切。「合いマーク」を付けたり、抜き取りでトルクを確認したり。問題があれば、すぐにフィードバックして改善!

まとめ:適正トルクで、確かな品質と安全を

さて、ネジの適正締結トルクについて、駆け足で見てきましたがいかがでしたか?

ネジの締め付けは、単なる作業ではありません。製品の性能と安全性を支える、とても重要な品質管理項目です。締めすぎも、緩すぎも、様々なトラブルの原因になります。

確かなものづくりのために、今日からできること:

  1. 条件を知る: 締める場所の状況(ネジ、部品、潤滑は?)を把握する。
  2. 目標を決める: 条件に合った適切なトルク値を設定する(計算、資料、テスト)。
  3. 道具を使いこなす: 正しいトルクレンチを選び、正しく使う。
  4. 精度を保つ: トルクレンチの定期的な校正を忘れない。
  5. 人と仕組み: 作業標準を作り、教育し、そして締結結果をきちんと確認する。

これらの基本をしっかり押さえることが、信頼される製品づくりへの近道です。この記事が、あなたの現場のトルク管理を見直し、改善するきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

さいごに

サンプルや資料などのご相談は本メールにお返事いただくか、弊社担当営業までご相談ください!

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